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近代日本語における依存構文の発達 ―構文はどのように発生・発達・定着するのか― [業績]

2018年予定「近代日本語における依存構文の発達―構文はどのように発生・発達・定着するのか―」
『国立国語研究所論集』


要旨
「うまく行くか行かないかはどうやるかで決まる」のように,2つのカ節を持ちながら「A節の不定命題の値はB節の不定命題の値(条件・決め手)に依存する」ことを表す依存構文は,近代において発生し発達・定着した可能性が高いことを,明治・大正期のコーパスを用いて示した。この構文が発達した要因を探るため,助詞ヤとの置き換えによる成立の可能性と,依存構文の要素となった動詞が持っていた項構造,後置詞ニヨッテの定着,及び間接疑問構文の既決タイプの発達との関係について考察した。その結果,助詞ヤによる依存構文はほとんど発達していなかったと見られることから,助詞ヤを助詞カによって置き換えたことが発達の要因になった可能性は低いと結論付けた。一方,初期の依存構文の要素となった動詞は,2つの事柄名詞(節)を項構造に持つ動詞であったことを示し,その項構造がカ節を持つ依存構文の発生の基盤となったこと,さらに,後置詞ニヨッテの定着により,さまざまな動詞が2つの不定命題を持てるようになったことを考察した。また,近世期には見られなかった,主節述語を「知れる,分かる」などとする間接疑問構文の既決タイプは,「どれだけ変わったかはこの調査を見れば分かる」のように,多くの場合に条件句を伴って用いられた。この条件句は,カ節が表す不定命題を判断するための条件となっており,依存構文の意味とも通ずるところがある。また,「知らない,分からない」などの未決タイプの多くが話し手の疑問を表わすのに対し,既決タイプと依存構文は,カ節の不定命題が話し手(1人称)自身の疑問ではなく,ある条件による事柄の一般的判断を述べることが多い点でも意味・構造形式的に共通している。つまり,依存構文は,2つの事柄名詞(節)を項構造とする動詞を基盤として,間接疑問構文の既決タイプの意味と構造形式の類推から発生し,その後,後置詞ニヨッテの定着によってより多くの動詞を主節述語のバリエーションとして取り込みながら,発達し,定着した可能性が高いと考えられる。

キーワード:間接疑問,既決・未決・対処,疑問・不定,因果関係,構文化

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