かわいいてんとうむし [日本語文法一般]
てんとうむしが大好きなので,てんとうむしの絵本ばっかり集まってます。。
『かわいいてんとうむし』はMelanie Gerthという人が書いたアメリカの絵本です。色彩がきれいで,日本にはない絵のセンスも好き。
文章はこんな感じ。
てんとうむし10ぴきおきだしてくると,ちょうちょがやってきて1ぴききえた・・・。
てんとうむし9ひきはっぱをたべていると,いもむしがやってきて1ぴききえた・・・。
てんとうむし8ぴきあそんでいると,ことりがやってきて1ぴききえた・・・。
という感じで,立体的なてんとうむしが1ぴきずつ消えていくしかけ絵本です。
「きえた・・・」という日本語もなんだかミステリアスでいい。毎晩読み聞かせてます。もう全部暗記しちゃいました。
難を言えば,この種のテントウムシ(ナナホシテントウやナミテントウ)は「はっぱ」を食べない! アブラムシを食べる益虫だってことは常識なのに!!
で,これの英語はどうなってるのか,すごく気になり始めて,同じ絵本の英語バージョンを買っちゃいました。。
『Ten Littele Ladybugs』です。
こちら,英語の内容と日本語の内容はぜんぜん対応してませんでした。。
英語はこんな感じ。
TEN little ladybugs sitting on a vine, along came a butterfly - then there were...
NINE little ladybugs skipping on a gate, along came a catapillar - then there were...
EIGHT littele ladybugs looking up at heaven, along came a bird - then there were...
これだと,「skipping on a gate」を「はっぱをたべていると」ということだと思いかねない。。まぁ,しょうがない。
言語面では,英語の分詞構文による押韻に,日本語の「~していると」というのが対応してる。でも,英語ではすべて「自動詞+前置詞」の動詞を使ってこれも韻を踏んでるんだけど,日本語ではそこまではできてない。
あと,文の構造ですが,やっぱり新情報の名詞句は動詞の後ろに来やすいんですね。「Here comes a ~」とかかなぁ,と想像してましたが,「along came a ~」でした。「不定冠詞+名詞」は文頭に立ちにくいですね。しかも,談話に初めて登場する出現の表現だからなおさら。There構文もそういうふうにしてできたんでしょうね。
ちなみに,スペイン語などは,英語よりずっと語順の制約がゆるいので,新情報名詞句の無標の位置は動詞の後ろです。
「根暗だったりする」―「だったり」の用法 [日本語文法一般]
「オレ,結構,右腕っぽい仕事に就くことが多い。でも,単に頼みやすい雑用人間だったり」
みたいな文脈に現れた「だったり」はどんな意味で使われてるのか,と同僚に質問されました。
まず,「たり」については,日本語の教科書や辞書には主に動詞に後接した例が載っていて,
用法1.継起的・並行的動作の例示:
(1) 朝からTVを観たり,ブログ書いたり,うたたねしたり,だらだらしている。
ここで例示されてる動作は,すべて個別の1回的な出来事になってます(実際の行為自体は何回やっててもいい) 。
用法2.対比的な動作・特徴の例示:
(2) 彼は来たり来なかったりする。
この場合は個別の出来事じゃなくて,習慣的なことを言ってる。よって,この時は,形容詞や名詞でもOK。
(3) 彼はやさしかったり冷たかったりする。
(4) 彼は父親だったり子供だったりする」
でも,この場合の名詞は形容詞的で,「父親っぽい(父親らしい)」とかいうくらいの意味。
で,質問の例文の「たり」は,明らかに名詞に後接した「だったり」の例で,さらに異質な意味を表わす用法3と思われます。
まず,先に「XはAである」という話題があって,そのAにはプラス評価の内容が現れます。「オレは頼みになる右腕的人間だ」みたいな。これに対し,でも良く考えると,「Aである」の裏側の特徴とも言えるようなマイナス側面=「Bである」ということかもしれない,「Bである」可能性もある,ということを言うために,「Bだったり」という表現が用いられるのだと思いました。「たり」には,「1つに定まらない」というニュアンスもあって,「かもしれない」の意味を帯びるのではないでしょうか。「Bだったりする」というふうに「する」をつけると,より断定的な感じがします。
この用法3は,「実は」とか「意外と」「単に」のような語や,「だったり」の前に「だけ(だったり)」のようなとりたて助詞が現れることが構造の特徴と言えます。
その外,「だったり」でぐぐってみると,先に「XはBである」というB=マイナス評価的内容があって,それに対して,「でも,意外にもXはAだったりする」というプラス側面を述べる用法もありました。これは,まぁ,用法3’のようなものでしょう。このときは,「実は」「意外にも」「なんと」のような語と共起することが多いと思います。
また,「~にかぎって」と共起して,「あぁゆうAな人に限って,意外にBだったりするのよね」のような対比構造を作ることも多いですね。
で,ここから「たり」の意味をまとめますと,もともとは1人の人(やモノ)のいくつかの(継起的・並行的)動作を例示するような用法があった。それが,1人の人の対比的動作や特徴をいう用法を持った。それがさらに,1人の人(やモノ)に,通常周りが認識している側面とは別の(対比的)側面があることを例示する用法を持った,ということではないでしょうか。
きちんと調べたわけではないので思いつきですが。
他に,この「だったり」はどうか,という例があったら教えてください。
副詞の使い方:「川はすばやく流れる」 [日本語文法一般]
日本語学を学んでいる学生の宿題を見ました。
次のような問題があり,毎年,悩まされます。
- つぎのカッコ内に入る副詞を3つあげなさい。
(1) 川は( )流れる。
(2) 鳥が( )鳴いている。
(3) 次郎は( )笑った。
(4) 雨は( )降った。
この練習問題の前に,
様態副詞(情態副詞)「さらさら,ぴかりと,ゆっくり,くわしく,しずかに」など
量・程度副詞「少し,たくさん,まったく,とても,かなり,まるきり,ろくに」など
時間副詞「いつも,はじめて,さっき,もう,とうとう,まず」など
という分類が紹介されています。
それで,いろんな回答がありました。
まず,留学生の間違いで多いのは,程度副詞を使ったものです。
「川は非常に流れる」「鳥がとても鳴いている」などです。
こうした程度副詞は,動作・運動を表わす動詞を修飾することはないですね。
動詞が状態的な意味を表わすと,「とても尊敬している」「非常に信頼している」など
あると思いますが。
また,「川はすばやく流れる」「川はうるさく流れる」というのもありました。
学習者の母語ではこのような表現が可能なのでしょう。
これらは,日本語では,逆に意志的動作(運動)を修飾します。
(ただし,「機械がうるさく動いている」など,意志のないものにも
使われます。「動物」や「機械」,「乗り物」などは人間により近いのでしょうか)
さらに,様態を表わす副詞ではなく,話し手の感情を表わす副詞を挿入して
「雨は憂鬱に降った」「次郎は卑怯に笑った」というのもありました。
その他...
「川はえんえんと流れる」「雨はびしょびしょ降った」
「川はあいかわらず流れる」「川はいつも流れる」「雨はさっき降った」etc.
言いたいことは分かるんだけど,微妙に変なんですね。。
また,副詞とはいえないものを挿入した例。
「鳥があちこちで鳴いている」「次郎は鼻で笑った」etc.
副詞というのは,文の骨格になる成分とは言いにくいので
(文の骨格になるような副詞もありますが)
上級の学習者でもなかなか難しいですね。。
なお,以上の間違いには日本人の学生さんのものも含まれてます。
新聞見出しのヲ格:「モノレール延伸を」 [日本語文法一般]
先日の学会で,森山先生が新聞の見出しの「へ格」について触れていらっしゃいました。
「花組と月組 経営統合へ」など,新聞見出しの「へ格」は未来テンスを
表わすというお話でした。(もちろん,動作名詞に後接した場合ですね)
で,わたしも,今朝,夫がつぶやいた見出しに反応したわけです。
こちら,カギ括弧つきで,見出しに「モノレール延伸を」とありました。
誰かの発話であるというのも重要ファクターですが,このヲ格,
「願望・要求」を表わすことになっていますね。
知らなかったです。
「花月市 モノレール延伸」だけだと完了時制,
「モノレール延伸へ」だと未来時制,
「花月市民 ‘モノレール延伸を’」だと願望・要求のムード,
というわけです。
ニ格やデ格はあるでしょうか。
「モノレール延伸も」
っていう,係助詞「も」が後接するのもよくありますね。
これは「モノレール延伸も(ありうる)」とかの意味ですかね。
「も」が動詞に後接すると逆接になりますが。
「モノレール延伸するも失敗」みたいに。
日々,気付いたことを少しずつアップしていきたいと思っています。
よろしくお願いします。